保助看ページ 138号

コロナ禍で看護人生をスタートして ─互いに支え合い貴重な経験に─

看護師

東京北医療センター
消化器・整形外科病棟

かわぐち さえ

川口 紗依さん 新人(2年目)

Profile
昨年新卒で看護師になり、現在の病院に就職しました。2年目となり業務にも慣れてきましたが、毎日新たな学びがあります。来年からは後輩の指導も行っていくので、気を引き締めて頑張って行きたいです。

さくらい みき

櫻井 美希さん プリセプター

Profile
2013年(平成25年)に新卒で、東京北医療センターに入職。3年目から新人指導をはじめる。現在は研修を受け、臨床指導者として学生・新人指導に携わる。

川口さん(左)と櫻井さん(右)

新たな指導計画・教育方法を模索

根拠をもって関わることで自分が何をすべきか明確になる

コロナ禍で迎えた新人さんの教育体制について教えてください。

櫻井:当院では新人1人に対して先輩2名が指導を担当します。川口さんに対しては、私と3年目の看護師がプリセプターとして関わりました。3年目の看護師にとってはプリセプターとしてのデビューでもあるので、3年目の看護師がメインで指導を行いつつ、私が3年目看護師の指導と見守りを行う役割を担いました。

指導計画は、まずメインのプリセプター(3年目看護師)が年間計画を作成し、スケジュールのすり合わせのほか、実施について相談を受け助言をしました。
ただ、コロナのためにこれまでの指導計画は参考にできず、私も具体的なアドバイスができない部分もあったりして、プリセプターは大変だったと思います。

「雰囲気づくり」を大切に。不安なく迎えるために重ねた話し合い

コロナの影響で実習が少なかったと思うのですがどう感じていますか。

川口:先生たちが実施計画をいろいろと立ててくれていたのですが、世の中の状況で変更が重なり、結局医療現場で実習ができたのは、成人の急性期と慢性期を合わせた2週間ほどだけでした。
それでも私のグループは実習に行けたほうだったと思いますが、患者さんに接する経験がほとんどないまま就職したというのが現実です。普通に実習を重ねてから看護師になった先輩たちと比べて、自分たちは何もできないんじゃないかな、と同期とも話していました。

不安はありましたけど、実際に働いてみると、就職前に想像していたほどではなかったです。温かく迎えてくれようとしている病棟の雰囲気を感じ、この病棟でよかったなと思いました。就職してから本当にいろいろと教えてもらいました。

実習経験の少ない新人さんを迎えるのは、どのような大変さがありましたか。

櫻井:私たちにとっても実習をほとんど経験していない新人を迎えるのは初めてで、どう教えるべきかというイメージはまったくできていませんでした。ただ、技術や基礎の部分を埋めてあげないといけない、とは思っていて、病院全体で1か月ほどの研修を組みました。いろいろな病棟をローテーションで研修してもらってから病棟に配属し、実習できなかった分を就職してから補っていくという感じでした。

配属された病棟はスタッフ同士の仲がいいので、迎える側としても、「あまり気負いすぎずにやっていこう」と話し合っていました。ただ、教育計画も指導体制もすべてが手探りで、参考になるものが何もなかったため不安がなかったわけではありません。
でも、何度も話し合いを重ねていくうちに、「一番不安を感じているのは入ってくる新人なんだ」という認識が共有されていったので、不安を抱える新人の気持ちをしっかりと拾い上げてやっていこうという雰囲気になりました。皆が不安でしたが、病棟全体としてまとまっていきましたね。

経験の少なさも不安も乗り越えて。着実に増えていった「できること」

少ない実習で不安なまま就職して1年たった今、どんなところが成長できたと思いますか。

川口:実はあまり成長できた感じがしていないんです。就職してから学ぶことのほうが多かったので、たくさん迷惑もかけていたのではないかと思っています。
とくに、1年目の最後に看護過程の展開をするという課題に苦戦してしまって。学生時代に終えていたはずの看護過程の展開をもう一度やるのか、というプレッシャーもありましたし、うまくできずに先輩にも迷惑をかけてしまいました

振り返ればいろんな経験をさせてもらいましたが、正直に言うと、今の1年目のスタッフと比べてもあまり変わらないような気もしています。

指導を振り返って「今だから思うこと」はありますか。

櫻井:川口さん自身はポジティブに捉えられていないかもしれないですが、アセスメントできることも増え、技術面も1人で任せられることも増えているんです。もっと自信をもってもいいと思いますよ。
患者さんと関わることも看護実践もできていない状態で現場に出るのは、不安や怖さもたくさんあったでしょうが、外から見ていて着実に成長していると思いますし、頼もしく感じます。1つひとつ着実に積み上げた結果が今の川口さんの姿なので、その成長した姿を見るととてもうれしく感じます。

指導面では、もっと一緒にできたらよかったのかもしれません。3年目のプリセプターにも成長してほしかったので任せてしまっていた部分も多く、メンタル面も業務面も、プレッシャーを感じていたんじゃないかなと思います。

悔しさもあったけど、頑張れる環境がある

指導してくれた先輩へ/指導についてきてくれた新人さんへ、それぞれが伝えたいことは。

川口:本当にいつも気にかけてすぐに話しかけてくれたので、勤務が一緒だとうれしく思っていました。今でも、教わったとおりにできなくて悔しい思いもしますし「看護師ってつらいな」と感じることもあります。1年後輩を見ても「自分のほうができる」と自信自身を持って言える部分はないかも知れません。
それでもここまで頑張って来られたのは、病棟の雰囲気が本当にいいからです。この病棟にいられるなら、まだまだ続けていけると思います。
たくさん迷惑もかけてきましたが、私がしてもらったことを後輩にも伝えていきたいです。

櫻井:命を預かる仕事である以上、どうしても厳しく指導しなければならない部分がありました。悔しい思いをしたことも、泣いたこともたくさんあったかも知れません。それでもしっかりと辞めずに頑張ってくれたことがうれしいです。
一緒に働くなかで、1年前にはできなかったことができるようになっているのを見て、とても頼もしいです。「わからないことを自分からすぐに聞く」ようになりましたし、技術面でも成長しています。
指導されたなかで「これはいい」と感じてくれた点は、下の世代に伝えていってくれるといいなと思っています。