保助看ページ 135号

保健師

いいだ ひかる

飯田光さん

現場の声を拾い、ダイレクトに「施策」へ

北区 健康部 健康推進課 健康づくり推進係
係長(課長補佐)

Profile
1996年に新卒で北区に入職し、今年で27年目。「健康づくり推進係」は3年目。係長をサポートする主査を2年間務めた後、今年から係長に。健康づくりの事業化に携われる日々に喜びを感じる。休日は家の掃除をして、身も心もスッキリ。

保健師になるまでの道のりをお聞かせください。

都立高校に通っていた頃、病院で看護師の仕事を体験できる機会があって、友人に誘われて参加したんです。ナースのユニフォームを着て患者さんのお世話をして。そんなきっかけもあり、より広い視野で「看護学」を学ぼうと、大学へ進学しました。

学生時代の夏休みに、毎年北区が実施していた喘息児のサマーキャンプがあり、アルバイト指導員として参加しました。そこで初めて事業を企画した保健師の方に出会いました。「地域で生活している人の健康増進を考える保健師という職業」に興味を持ち、3年間看護学を学んだ後に保健師育成コースに進みました。保健所実習を通して、自分の進む道を確信! 迷わず「行政保健師」の道を選びました。

職場での日常のお仕事はどんな感じですか。

私の在籍する「健康づくり推進係」には12名の職員がいて、主に3つの業務を分担しています。1つ目は、健康づくりに関するイベント事業の企画・運営です。春の「桜ウォーク」・秋の「北・水辺ウォーク」といったウォーキング大会や健康フェスティバルなど、さまざまなイベントがあります。また、親子向けの「食育クッキング教室」も人気があります。北区は野菜の摂取率が低いと言われていて、企業と連携して野菜を積極的に摂ってもらう企画を立て、レシピブックを作成しました。

2つ目が「北区ヘルシータウン21」という区の総合健康づくり計画の策定や進捗管理の仕事です。そして3つ目が、区民の健康づくりの推進や保健衛生の向上に関することを話し合う「健康づくり推進協議会」の運営です。

役所に保健師が勤める意義といえば、「現場の声を拾って施策化」していくことではないでしょうか。5年に一度、区の総合健康づくり計画を改定するのですが、今年から来年度にかけては各事業を見直す大事な時期になりそうです。北区は高齢者が非常に多く、区の事業も高齢者向けが多くなりがちです。今後は、働き盛りの若い世代の方でも参加しやすい、生活習慣病予防の企画に力を入れていきたいと考えています。

係長として後輩の育成はどのようにされていますか。

現在は、13〜15個のイベントや企画が同時進行しているのですが、それぞれメイン・サブの担当を決め、各事業の業務を分担しています。個別の事業は担当者の企画を確認し、課の方針に関わることは課長に方向性を確認するなど、職員と課長の「橋渡し」の役割も担います。

係長としての「やりがい」を教えてください。

今までは、担当者として事業を運営していましたが、係全体を見るようになって、だいぶ視点も変わってきました。それぞれの事業の業務遂行を管理するだけでなく、個々の事業がほかの事業でも活かせないかと考えるようになりました。例えば、「あるきた」という区のウォーキングアプリでウォーキング以外の事業のPRをしたりとか。係全体を視野に入れられる、係長ならではの醍醐味かもしれません。

お仕事をする上で、大事にされていることはありますか。

まずは、自分だったらこんな風に教わりたい、と思うことを職員にもていねいに伝えるように心がけています。ていねいに伝えれば、伝えられた人も次の人に同じように伝えてくれると思うので。

もう1つは、「完璧よりもチャレンジを!」ですね。やはり、完璧を求めるあまりにその場に立ち止まってしまうのはもったいない。どんどんチャレンジして少しずつでも前進していきたいと思っています。

心に残るエピソードを教えてください。

東日本大震災発災時に障害福祉課で勤務していたのですが、その時に「事業化」につなげられた思い出があります。東京都が「在宅人工呼吸器使用者のための災害時個別支援計画策定指針」を作成したため、北区でも在宅人工呼吸器使用者の方たちに向けて、災害時の個別支援計画を検討しました。

区内の訪問看護ステーションにご協力いただいて、対象者の把握や支援計画の作成、マニュアルの整備をおこないました。区内の在宅人工呼吸器使用者を把握しようと広報誌に掲載したところ、在宅酸素を使用されている方からの問い合わせが殺到したというエピソードもあります。事業化されると、担当者が変わってもずっと引き継がれていきます。事業化することはとても重要なことだなぁと思っています。

今後キャリアを積まれる看護職の皆さんへの「メッセージ」をお願いします。

★節々のタイミングで「振り返り」を
以前、北区の新任期保健師向けの人材育成マニュアルの作成に携わった際に、自治体保健師の標準的なキャリアラダーをマニュアルに掲載しました。その時改めて、自分のキャリアがどの位置にあるのか再確認することができ、よい振り返りの機会となりました。

同時期に、保健師の活動報告会を仲間と立ち上げました。新人の方は入職してからの1年間の活動のまとめを、中堅保健師の方には、これまでの保健師活動を振り返っていただく機会としました。やはり今後を見つめる上でも、今までの活動を振り返ることは大事だと思います。

★チームで共有することで、安心できる場に
保健師といえば、1人で家庭訪問に行き、支援方針を判断するなど、1人でこなす仕事も多くあります。そんな中、北区では個別支援をチームでおこなうことを大切にしてきました。家庭訪問には1人で行っても、戻ってきたら職場の仲間に報告し共有し合える、そこには「心理的な安全」があると思うんです。

私自身、異動を重ねるごとに知り合いが増え、庁内や関係機関に顔が見えるネットワークができたことで、仕事がしやすくなったなぁと感じています。「みる、つなぐ、動かす」は保健師活動のコアだと思いますが、皆の力を借りて仕事ができている、と実感する日々です。