保助看ページ 135号

助産師

さいとう じゅんこ

齊藤順子さん

プラスアルファの役割で、一歩前へ

社会福祉法人恩賜財団母子愛育会
総合母子保健センター 愛育病院
副看護師長

Profile
2001年に新卒で愛育病院に入職、22年目を迎える。
主任を約8年務めた後、今年の2月から副看護師長に。
6人きょうだい(兄姉弟)の5番目で、大家族の中で育つ。現在は高校2年から保育園年長の4人の男の子を子育て中。

助産師になるまでの道のりをお聞かせください。

年の離れた2番目の兄(当時23歳)の奥さんが出産し、小学校高学年の頃に早くも姪っ子ができました。さらに高校生になると、姉が出産で里帰りし、私も赤ちゃんとベッドを並べる日々が始まって……。母親になった義姉や姉のたくましい姿を目の当たりにして、自然と助産師への思いが募りました。そして、助産師コースのある大学で猛勉強し、看護師・保健師・助産師の3つの資格を取りました。

病棟での日常のお仕事はどんな感じですか。

愛育病院は、「産科」と「小児科」に特化した病院で、私が勤務する病棟には主に褥婦の方と新生児がいます。「退院後、お母さんたちが育児に困らないように」という視点で、育児や授乳の指導に励んでいます。

生後2日くらいまでは、まだ母乳が分泌しづらいのですが、赤ちゃんは本能でおっぱいを欲しがります。その間の頻回授乳や、母乳が出始めるまでの痛み、出産に伴う身体の痛みなど、お母さんたちの悩みは尽きません。そうした身体面のケアはもちろん、産後うつなどの周産期メンタルヘルスケアも欠かせません。

副看護師長として後輩の育成はどのようにされていますか。

日常業務とは別に、3チームに分かれて勉強会を開いています。新生児のケア、産後の急変対応、NCPR(新生児蘇生法)についてなど。各チームで1年間のテーマを決めて学習し、病棟でスキルテストをおこないます。

そして、2か月に1度、師長・副師長・主任・各チームリーダー(中堅の助産師3名)でミーティングを開き、新人教育や勉強会の進捗状況などを把握します。さらに年に3度の目標面接で各メンバーの成長を確認し、最後に師長との話し合いの場があります。

副看護師長としての「やりがい」を教えてください。

現場が大好きなので、管理職でありながら、ほかのメンバーと一緒に患者さんを受け持てるのが何よりも嬉しくて……。師長から業務の相談を受けた時も、スタッフの身近な存在として、「現場の活きた声」を伝えるよう心がけています。

お仕事をする上で、大事にされていることはありますか。

「お母さんたちの思い」と「必要で正しい知識」とのバランスを考えることですね。今までは助産師としての知識や自分の子育ての経験から、「お母さんや赤ちゃんにとってこれは大事」と思うことは、かなりの熱量で伝えていて(笑)。でも、クタクタに疲れているお母さんに、母子同室や母乳推進などを求めすぎるのはNGだと思うようになってきました。

さらに、前回よりもできるようになったことを褒めたり、授乳の合間に雑談を交えたりすることで、「お母さんの笑顔を引き出す」のも大事な役割です。

心に残るエピソードを教えてください。

長男を出産した翌年に、職場復帰した日のことが忘れられません。息子を初めて保育園に送り、その足で病院へ向かいました。久しぶりの仕事で自信をなくし緊張もピークだった私を、当時の師長がなんと分娩担当に(笑)。1年以上のブランク後に、突然の分娩介助。文字通り、ドキドキの1日でした。そんな中、無事お産を終えて、なんとかできた! という高揚感から、自信を取り戻すことができました。

また、当時「今日は何時に終わるの? 早く帰ってね」と、いつもプライベートのことを気にかけてくださる先輩がいて、とても心強かったです。現在、愛育病院の産休・育休・復帰後の育児中メンバーは年々増加しているのですが、そんな時こそ皆にとって「働きやすい環境づくり」をしたいです。今度は私が後輩たちに対して声がけをする番です。

今後キャリアを積まれる看護職の皆さんへの「メッセージ」をお願いします。

★プラスアルファの役割を持つことで、前向きに
3人目の出産の復帰後は、仕事に子育てにと、とにかく時間がいくらあっても足りなくて。そんな中、師長から2度にわたり、雑誌の原稿執筆の依頼がありました。あれこれ調べものをしたり原稿にまとめたり。苦労の連続でしたが、成し遂げられた時の充実感は得難いものでした。

また、育児に焦点をあてた「出産準備クラス」の立ち上げに関わったのも、貴重な経験でした。自分の子どもの成長記録を交えながら、資料づくりをして、どちらも、時間がない中でプラスアルファの役割をやり抜き、より前向きな気持ちになれましたね。

先日、副師長として東京都看護協会の「ファーストレベル」という管理者の人材育成研修を受講しました。その中でも、人材育成のために少しだけ大変なこと、役割を与えて頑張ってもらうことの意義を学んだばかりです。当時の自分も師長から役割をいただいたんだなぁと、懐かしく思い出して。今後は、後輩たちのキャリアアップのモチベーションのためにも、ぜひ実行したいです。

★自分の思いをどんどん周りに発信して
もう1つは、自分の気持ちを上司に積極的に伝えて欲しいですね。看護に対する思いや、病棟に足りないことなど、メッセージを発信してください。子育て中のスタッフには、子どもは必ず成長し、やがて自分の時間を持てる時が来るので、仕事を続けてもらいたいです。大変な時は休み、できる時はきちんと仕事をしましょう。また、子育てをしていない方にも休める時は休んでもらいたいです。どちらも「お互いさま」の心を忘れずに。