保助看ページ 135号

看護師

つかはら じゅんこ

塚原純子さん

マネジメントの視点から、看護の姿勢も変わる

公益財団法人佐々木研究所附属
杏雲堂病院 内視鏡・放射線科
主任

Profile
新卒で看護師になって以来、30年弱のナース歴を持つ。夫の転勤で東京へ。杏雲堂病院に入職して9年目。昨年の4月より主任になり、マネジメントの視点を持つことで、看護への姿勢も変化。「食」への興味が尽きず、日々の料理が楽しみ。

看護師になるまでの道のりをお聞かせください。

小学生の頃に観ていた医療ドラマの看護師さんが、とても印象的だった記憶があります。高校卒業後は専門職の学問を学びたいと、選択肢の1つだった「看護学科」がある近所の短大に進みました。ところが入学したものの、1年生から解剖学や生理学などが難しすぎて、手に負えず。当時のカルチャーショックはすごかったですよ(笑)。

そんな中でも、看護実習は人と接するのが楽しく、充実感がありました。ベッドメイキングや清拭、排尿介助など、今思えば看護の基本技術が詰まっていました。気づけば、衝撃を受けたはずの看護学をそのまま職業にしていました。

検査室での日常のお仕事はどんな感じですか。

看護師歴は長いのですが、検査部門での勤務は今の病院が初めてでした。治療処置がメインの仕事なので、医療材料や医療機器などを使いこなすスキルも必要で、部署に配属されてから先輩方に教わりながら覚えていきました。今では、医療機器の補充や故障連絡など、メーカーの方との連絡も担っています。

病棟と大きく違うところは、来る患者さんがほぼ毎日初対面の方ということです。外来だけでなく、入院患者さんもいらっしゃいますが、どなたに対しても安全に事故なく検査を済ませ、看護をしなくてはなりません。しかも検査の準備から、介助、終わって送り出すまで、短時間でギュッと詰まった、密度の濃い仕事です。

内視鏡は午前の上部検査、午後の下部検査を合わせて1日15〜20件くらいです。放射線の方は、IVRは症例数が少ないのですが、CTやMRIや放射線治療はほぼ毎日あります。こちらは一日の検査数も多いので、常に判断力や思考力が問われますね。毎日、割り振り表に合わせて、内視鏡、放射線の検査に関わっています。

主任として後輩の育成はどのようにされていますか。

今の職場は、看護師は師長を入れて7名、さらに看護助手とクラークを含めると9名です。スタッフは頑張り屋で前向きな方が多いですね。意見交換もしやすく、風通しのよい雰囲気です。病棟や他部署から異動してきた方もいますが、皆看護師としての経験が多く、頼りになります。

毎日、限られた時間内での仕事なので、定期的なミーティングをする余裕がありません。そこで、業務の手順を改善した方がよい時や、トラブル、インシデントなどがあった時は、中心となって声を上げるようにしています。そして、検査前や合間を見て皆で集まり、その場で短時間の話し合いをします。

主任としての「やりがい」を教えてください。

長年ナースをしていますが、管理職としての立場になったことで自分自身が大きく変わってきて、まさに「目から鱗」です。今までさまざまな現場で働いてきましたが、現在は一緒に働いているスタッフがとても頼もしく感じられ、 それぞれの得意・不得意なことが自然と見えるように。そして、スタッフの個性や強みを知ることで、安心して業務を任せられる心境になりました。
こうしたマネジメント力が、患者さんのためだったり、病院の経営にもつながっていたり。何よりも看護への取り組み方も変わってきて、だいぶ視野が広がりました。

お仕事をする上で、大事にされていることはありますか。

何よりも「挨拶」ですね。患者さんに対してもスタッフに対しても、自分から声をかけるよう心がけています。先ほども申し上げましたが、検査室の患者さんとはほとんどが初対面です。検査を控えて不安な思いでいる患者さんに対して、まず名乗ることは欠かさずおこなうようにしています。 その際、患者さんのお返事や表情から、声のトーンを変えたり調整したりすることも重要です。元気すぎると逆効果なこともありますから。

患者さんと接する時間は短いものの、コミュニケーションは大事です。そのためにも、事前に電子カルテで情報収集をしておきます。そこから患者さんの背景を読み取って、会話につなげています。

心に残るエピソードを教えてください。

新型コロナウィルスの感染拡大で、内視鏡・放射線検査の環境ががらりと変わったことでしょうか。2年半前、最初の感染拡大が始まった頃は、1カ月ほど検査業務がストップしてしまう事態に追い込まれて。私たちはほかの病棟や外来のリリーフに回りました。

そして1カ月間感染対策に明け暮れた後に、ようやく再スタートを切りました。患者さんの動線、検査室内の消毒など、メンバーでアイデアを出し合って 環境を整えました。今ではそれがスタンダードになっています。

今後キャリアを積まれる看護職の皆さんへの「メッセージ」をお願いします。

★仕事が「好き」という思いを大切に
私自身、長いキャリアの中で仕事から離れていた時期も数年ありました。そんな中で、やはり社会に参加したい、再び人の役に立ちたい、という思いがムクムクと湧いてきました。その気持ちこそ、モチベーションにつながるのではないでしょうか。

★看護職の活躍の場はさまざま。自分に合う場所を見つけて
家庭の事情などで、仕事が続けられない時期もあると思います。そんな時はいったん休んでリフレッシュするという選択も念頭に置いてみてはいかがでしょうか。そして、復帰後も病院以外でも、看護師が活躍できる場は多岐にわたっているので、その時々に合わせていろいろな経験を積んでいくのもよいと思います。必要とされる場がきっと見つかるはずです。