東京都多摩府中保健所
地域保健推進担当課長
河西(かさい)あかねさん
──現在の職場や職種、主な業務内容を教えてください。
私は、6市を所管する東京都多摩府中保健所の統括保健師として、各市の保健福祉サービスの向上や健康危機管理の強化の業務を担当しています。
保健福祉サービスの向上に関しては、特に所管内の保健師を中心とした保健医療福祉人材の育成に力を入れています。保健師の日々のケース対応では、市との連携を密にし、サービスの質が高まるように努めています。また、6市合同の統括保健師連絡、市単位での市と保健所保健師の連絡会や、研修会の企画・運営、市と保健所の新任期や中堅期の保健師向けの研修なども業務の一つです。
そして、健康危機管理の拠点としては、所管内の健康危機管理対応力の底上げや連携強化のために、市の保健師との人事交流研修を進めています。現在、1市の保健師が保健所の感染症担当部署で、約3カ月間の研修を受けているところです。パンデミックに備えて、所管内の保健師全体の力がより発揮できる体制を目指しています。
──東京都看護協会(以下、協会)に入会したきっかけを教えてください。
私が協会に入会したのは、1995年ごろのことでした。当時、多摩保健所稲城保健相談所で主任となり、そこで統括的な立場だった先輩保健師からお誘いいただいたのがきっかけです。途中、退会していた時期を挟みつつも、通算では13年ほど所属しています。
協会は看護職の人材育成や普及啓発活動に先駆的に取り組んでおり、看護職の一歩先のあるべき姿を学べる場だと期待して入会を決めました。協会は看護職同士が連携して、看護の質の向上に努めていく上でのリーダー的な役割を担っていると感じています。
──協会で印象に残っている活動はありますか?
協会の活動で特に印象に残っているのは、2022年度の三職能合同交流集会(以下、交流集会。※1)で、シンポジストとして登壇したことです。そのときは、「保健師へのメンタルヘルスケア?東京都多摩府中保健所での取組」というテーマでお話ししました。
多摩府中保健所管内は、新型コロナウイルス感染症の発生数が全国でも有数の規模で、感染者対応が非常に逼迫する状況でした。2類相当の感染症の流行が長期化する中で、保健師のメンタルヘルス不調が見られ、多摩府中保健所ではさまざまなメンタルヘルスケアの取り組みを進めてきました。
コロナ禍の保健所の状況は、外部からはなかなか見えにくいものです。そこで、保健所では実際に何が起きているのか、どのような点で困っているのかを交流集会で伝えて、それがほかの看護職の参考になればと考え、協会からの登壇依頼をお引き受けしました。
※1:三職能合同交流集会
協会の職能委員会では、保健師、助産師、看護師Ⅰ、看護師Ⅱの四つの職能委員会が各領域における課題発見や情報共有などを行っている。この三職能合同交流集会は看護職の交流を通して意見交換し、課題を解決するためにどのような活動を推進していくかなどについて検討している。
──交流集会では、どのようなお話をされたのでしょうか?
主に新型コロナウイルス感染症の対応における保健師のメンタルヘルスケア対策についてお話ししました。当時、保健所の保健師や他職種の職員は24時間365日対応に追われ、メンタルヘルスの不調で休職してしまう職員もいる状況でした。どのように保健師をはじめとする保健所職員のメンタルヘルスを保ちながら、困難な健康危機に対応していくべきか、私たち管理期の保健師も非常に悩んでいたのです。
具体的な取り組みとしては、保健師との定期的なミーティングや個別相談の実施や、統括保健師として全保健師への面談も行いました。
また、パンデミック中でもOJT(職場内訓練)は積極的に実践しました。保健師による疫学調査の電話連絡は、比較的難易度が低い事例から始めてもらい、それができるようになったら難しい事例に進むように工夫するなど、保健師の実践能力の向上とモチベーション維持を図りました。
──感染症対応が逼迫する中で、保健師のメンタルヘルス不調が見られていたのですね。
そうですね。保健師にとって大変つらかったのは、新型コロナウイルス感染症の対応が業務の大半を占めるようになり、それまで行っていた地区活動や対面での関係機関とのネットワークづくり、対象者への支援などができなくなったことでした。
そのような状況下でも、若手の保健師には1事例あたりの地区活動を丁寧に行い、経験してもらうように努めました。
また、予算を確保して月に2回、公認心理師が保健師や事務職員などと面談する体制も整えました。その公認心理師はとても親身な方で、仕事だけでなく、コロナ対応でしわ寄せが来ていた家庭での育児の悩みなど、それぞれの保健師に応じたアドバイスをくださり、私たちにとっては大きな助けとなりました。
──登壇によって河西さん自身の成長につながったこと、よかったことはありますか?
登壇して取り組みを伝えたことが、保健師たちの活動の足跡を残す一助になったと感じています。発表に向けて職場の管理期・中堅期の保健師たちとこれまでの取り組みを振り返り、資料を作成する過程で、私たちの活動が目に見える形になりました。そして、「保健師って頑張っているな」と改めて実感し、私自身、この難局を持ちこたえる力につながりました。
──交流集会に参加するメリットを教えてください。
交流集会は保健師・助産師・看護師の看護職同士が、それぞれの専門性や得意な業務を知り、結びつけられる意義深い場だと感じています。
例えば、東京都の委託事業として、東京都助産師会の助産師には、新型コロナウイルス感染症に罹患した妊婦さんの健康観察をお願いしました。また、訪問看護ステーションの看護師には、新型コロナウイルス感染症の患者さんを、自宅から入院搬送車に乗せるまでの対応をお願いしたこともありました。こうした現場での具体的な対処法を考える上でも、まずは三職能それぞれの専門性を理解することが大切だと思います。
──協会に入会する意義を教えてください。
協会に入会する意義は多岐にわたると考えています。研修や交流集会などを通して、専門職としての知識や技術を身に付けることはもちろん重要です。しかしそれだけではなく、同じように頑張る仲間がいることを知ることができる場としても大きな励みになります。
また、協会は保健師に必要な情報を収集・検証し、常に新しい情報を発信しています。そのため、今は看護の世界で何が話題になっているのか、どのような課題があるのかをいち早く知ることができるのも、大きなメリットですね。
特に若手のうちから協会の活動に参加することは、将来を見据え、職能としてどうありたいのかを考えていく場にもなると感じています。
──協会に対して今後期待することはありますか?
東京都ナースプラザ(※2)で行っている「実習指導者研修」は、今は病院での学生実習指導が中心の内容だと感じています。保健所や市町村保健センターの保健師向けの内容も、充実するとうれしいですね。
現場では中堅期の保健師が不足しており、2~3年目くらいの若手保健師が実習指導を担当している現状があります。協会でそうした若手保健師が学べる機会をつくってもらえれば、後進の育成に大きくつながると思います。
また、産育休中の看護職向けの研修や交流の場があるとよいかもしれません。産育休中は職場の研修を受けることが難しいですし、再び現場に戻ることへの不安を感じる人も少なくありません。オンラインや託児付きの研修や交流会で、新しい知識や技術を身に付けたり、育児中の悶々とした気持ちを打ち明けたりできる場があれば、若手保健師も協会の活動に参加しやすくなるのではないでしょうか。
※2:東京都ナースプラザ
東京都は、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に基づき、医療施設などに従事する看護職員を確保するため、「東京都ナースプラザ」を設置している。東京都看護協会に運営を委託して、離職中の看護職の再就職相談やあっせん、再就職に役立つ研修、看護についての普及啓発活動を行っている。
──最後に、若手看護職や協会への入会を検討している方に向けてメッセージをお願いします。
私は新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し、職場以外に学べる場所やつながれる場所があることが心の支えになると強く実感しました。
協会でのほかの職場の保健師たちとの交流を通して、新型コロナウイルス感染症の患者さんの把握から入院調整、そして自宅で安心して過ごすためのネットワークづくりまで、全国の保健師が同じ方向を向いて活動していたことを知りました。保健師としての専門性の基盤ができているからこそ、困難な状況に対応できたのだと再認識し、「保健師って本当にすごいな」と大きな元気をもらえたのです。
協会のように看護職同士がつながれる場所にいることは、今後の仕事を進めていく上での意欲や支えになります。ぜひ、気軽に参加していただければと思います。
東京都立墨東病院
総合周産期母子医療センター 9B病棟主任
三河遥(みかわはるか)さん
───助産師を志したきっかけを教えてください。
小学生の頃、骨折で1カ月間入院をした経験がきっかけです。
入院中は看護師の方々が寄り添い、心のケアまで丁寧にしてくださった姿がとても印象的で、「人の不安に寄り添える仕事がしたい」と自然に思うようになりました。当時所属していたガールスカウト活動を通じて、人と関わる楽しさや誰かを助ける喜びを知ったのも大きかったと思います。
高校時代、身近な友人が出産しました。命を懸命に育てて行く姿をそばで見て、「自分にできることはなんだろう」と深く考えるようになりました。その経験を通して、妊娠前からの支援=プレコンセプションケアの大切さや、子どもを育てる過程を周囲がどう支えていけるのか、社会全体の理解と支援のあり方について考えるようになりました。命のはじまりに寄り添い、誰もが安心して子育てできる社会をつくる一助になりたいという思いが、助産師を志す思いをさらに強くしたのだと思います。
───東京都で働くことを選んだ「思い」があるとお聞きしましたが。
父の仕事の都合で転勤が多く、幼少期からさまざまな土地で過ごしてきたのですが、父から「人はどこにいてもそれぞれに違う背景をもっている。その違いを受け入れることで初めて本当の意味で理解し合える」と聞かされて育ちました。幼い頃から相手を尊重し多様性を理解し合うことの大切さに触れてきたので、この言葉が私の中の原点になっています。
東京という場所は全国からさまざまな人々が集まり、文化や価値観が交錯する場所です。助産師として将来どうなりたいか、人としてどうあり続けたいかを考えたとき、多文化への理解が求められる場面が多い場所で、多様な生活背景をもった妊婦さんやご家族が安心してサポートを受けられるように、自分の視野や感性を広げ、柔軟で広範な知識を身に付けたいと思いました。
助産師としての知識や技術を磨くだけではなく、異なる価値観を理解し、共感し、一人ひとりが寄り添う力を高めていきたい。その思いで都立病院への就職を決めました。
都立病院は多くの人々が利用する施設であり、多様な患者さんと接する機会が豊富です。ここでの経験を通じてより広い視野をもち、多くの方と関わりながら学び続けることができると確信しています。
───子育てと仕事を両立されていますね。
新卒で入職後すぐに、ハイリスク妊産婦を受け入れるM・F-ICU配属となり、高度な医療の現場で命と向き合うことになり、そこで医学的社会的側面から母子に関わる難しさとやりがいを知りました。
2019年に「アドバンス助産師」の資格を取得後に妊娠出産を経験し、産休育休を経て現在は9B病棟で勤務しています。
妊娠出産と育児を通じて、支援する側からされる側になり、育児の大変さや働く母としての葛藤、復職することの怖さ、生活が一変してしまったことへの戸惑い、助けを求める勇気の難しさを初めて体験しました。
家庭や職場、多くの社会資源に支えられたからこそ、今の自分がある。それらを肌で感じたことで、「より丁寧に、一人ひとりの背景に向き合いたい」と感じるようになりました。
───主任としても活躍されていると聞きました。
職場に助産師として尊敬する先輩がいて、その姿に近づきたくて、昨年主任となり、将来は管理者として活躍できることを目指しています。
主任になったもう一つの理由は、私たちは助産師として支援する側である一方で、私たち自身が幸せでお互いを大切にしなければならないと感じたからです。自分たちが過ごすこの環境を、より良くしたいと思いました。
夜勤のある現場で、助産師として、主任として、母としての役割も果たしながら働き続けることは簡単ではありませんが、応援してくれる環境と周囲の理解、家族と娘の存在が私を支えてくれています。
───東京都看護協会に継続して入会してくださっていますね。
入職と同時に東京都看護協会(以下、協会)に入会しています。先輩から、「研修があって助産師として成長できる機会がたくさんある」「職場以外の助産師同士のつながりから学ぶことができる」と聞いたのがきっかけです。現在は助産師として12年目になりますが、出産や育児で現場から離れていた期間もずっと在籍していました。
私が目指すのは、「誰にでも寄り添い、理解し、ともに歩む力をもつ助産師」なんです。目標に近づくためには協会のサポートやネットワークが大切だと感じているので、協会には積極的に関わり続けると決めています。
───協会の研修やセミナーはいかがでしょうか。
助産師になって5年目の頃、協会主催の「プレファミリー講座」に講師として参加しました。
通常の業務とは異なる「人前で話す」経験は貴重な学びで、現在でも保健指導などの伝える場で大きく活かされています。
また、他施設のベテラン助産師さんとの関わりを通じて、職場を越えたつながりや連携の大切さも実感しました。一番印象に残っているのが、参加された妊婦さん、パートナーさん、助産師が一緒にフラを踊り、参加者みんなが笑顔になった瞬間です。
住む場所も生きる環境も立場も違う参加者がともに笑い同じ時間を過ごす中で、助産師同士のつながりも深まりました。そうした仲間と、助産師として何ができるのかを職場の枠を越えて共有し、考えることによって、私自身の視野も大きく広がりました。
それまでの助産師としてのアプローチから一歩進んだ柔軟な寄り添いの形を学んだ経験は、現在の自分につながっていると感じます。
また、「コネミドTOKYO※」では、助産師として管理者として、まだまだ学ぶべきことがたくさんあることを実感しています。
同じ悩みを抱える他施設の助産師と「自分の率いるチームをどのようにリードしたらいいのか」「よりよいケアを提供するためにはどう工夫すればいいのか」など、ともに解決策を模索したり試行錯誤したりする学びの場となっていて、オンライン開催なので子育て中の私にとって参加しやすく、今も続いています。
コネミドTOKYOは私にとって、『東京都の助産師』という大きなチームで悩みや喜びを共有できる、貴重な居場所といえるかもしれませんね。
※東京都看護協会 助産師職能委員会が主催する助産師のオンライン交流会
───「つながり」を大切にされているのですね。
私が協会に入会し続けているのも「つながること」の大切さを実感しているからです。さまざまな年代、経験をもった専門職と交流できることは、協会に入会する最大のメリットではないでしょうか。
特につながりの力を実感したのは育児休業中です。育休中の3年間は、初めての育児に追われ慌ただしく過ごしながらも、現場から離れていることや復職できるだろうかという不安を感じていました。そんな中、オンラインでの研修や文献検索など最新の医療情報や技術、医療現場での実際の取組みについて学べたことや、ネットワークを通じて同じ立場の仲間と意見交換できたことは、とても心強かったです。育児休業中は孤独を感じる瞬間もたくさんあったので、誰かと話せることはとてもありがたかったです。
───協会の事業について率直なご意見をお願いします。
自分自身の経験を通じて強調したいのは、これから育休や産休を取得される若い世代の助産師さんや看護師さんにとって、職場以外のつながりをもっておくことはとても大切だということです。
協会の事業やイベントでは、他施設の助産師さんと簡単につながることができ、日々の業務やスキルアップに活かせる新たな視点やアイデアが得られます。コネミドTOKYOなどのコミュニティに参加していると、たまに行く学会や研修で出会える仲間が多くなり、学会に行くのも楽しみになります。
あったらいいなと思うのは、「夜勤や子育て両立支援のピアサポート」ですね。子育て中特有の悩みかも知れませんが、日中に休めないまま夜勤に入り、夜勤明けには母としての役割も求められる生活では、体力も精神面もバランスを崩してしまうことがあります。そんなときに、同じ立場の仲間とつながれるオンラインコミュニティなどで、子どもを寝かしつけた後に聞いてもらえる場所があると、「一人じゃない」と感じられると思います。
また、看護職や助産師、保健師としての知識や技術を共有できるショートセミナー+語りの場があったら、保育園と連携する工夫や手抜き料理のコツなども共有できるかも知れません。「しんどい気持ちを出していい」というピアサポートの仕組みが、メンタル面の大きな支えになると思うのです。
子育て中の人に限らず、新人スタッフ、中堅指導者、プラチナ世代など、いろんな立場の人にとって「対等につながれる場所」があったらいいですね。
───新人さんや後輩の看護職にメッセージを。
現在は仕事と小さな子どもの育児を両立している状態ですが、慌ただしく過ぎていく日々の中でも充実感をもって働けているのは、職場の方々の理解や、娘を育てるために多くの方々からいただく支援のおかげだと、感謝の気持ちを抱きながら過ごしています。これまでに多くのお母さんを支援してきましたが、自分自身が妊娠し母になってはじめて、助産師であっても助けを必要とするときがあることを実感しました。
命を預かる仕事に就いていると、自分自身が弱音を吐くことや助けを求めることが難しいように感じることがあります。どんなに忙しくても、妊婦さんやご家族に全力で寄り添うことが求められ、つい自分の体調や気持ちを後回しにしてしまうことが多いのではないでしょうか。どうしても「看護師・助産師・保健師である自分」に対する期待や責任を感じ、周囲に助けを求めることを後ろめたく感じてしまうこともあるかも知れません。
でも、妊娠中や出産後に抱える悩みや体調の不安、育児に関する心配は、職業にかかわらず同じように訪れます。キャリアプランやライフプランを考えながら自分自身も支えられる存在であることを実感して、「自分を大切にしながら支えること」を忘れずにいてほしいです。
立川中央病院
地域包括医療病棟師長
齊藤清子(さいとうきよこ)さん
──現在の職場や職種、主な業務内容を教えてください。
私は地域包括医療病棟師長として、病棟の管理業務を行っています。主な業務は、患者さんの入退院調整やベッドコントロール業務、スタッフの勤務管理などです。また、病院全体の看護に関わる業務として、感染症対策、看護記録・電子カルテ・クリティカルパスなどの統括も担当しています。
──地域包括医療病棟の特徴を教えてください。
病棟の病床数は31床で、看護師数は16名です。内科、眼科、泌尿器科などの混合病棟で、新型コロナウイルスを含む感染症患者さんも入院されています。
入院患者さんは70歳以上の高齢者が大半を占めており、病院周辺に在住する方が多いです。中には、親子三代にわたって病院を利用されているご家族もおり、地域に密着した医療を提供しています。
力を入れて取り組んでいるのは、地域連携室と協働した退院支援です。病院近くの団地に独居する高齢の患者さんが多い傾向があるため、入院早期からのリハビリや介護保険申請の支援をしています。
また、患者さんの嚥下状態を把握して自宅や施設への退院につなげるため、私自身もなるべく食事介助を実践するようにしています。患者さんは食事が摂れなくなると退院先が限られてしまうため、リハビリスタッフと連携して、嚥下機能の維持や回復を支援することが重要です。
──東京都看護協会(以下、協会)に入会したきっかけを教えてください。
私が入会したのは、1999年に当院へ入職したときです。先輩看護師から、「研修がたくさんあり、看護師としてのスキルアップにつながるよ」と聞き、どんな経験ができるだろうとワクワクしたのを覚えています。入会当初から、師長が私の成長段階に合った研修を選んで、参加させてくれました。新人研修や3年目向けの研修などに参加して、協会を積極的に活用していました。
──協会の活動で、印象に残っているものはありますか?
特に印象に残っているのは、2013年に受講した認定看護管理者教育課程(※)のファーストレベルです。当時、私は統括主任を務めており、看護部長から「今後、師長になるに当たって、看護管理やマネジメントを学んでみてはどうか」と勧められたのがきっかけでした。
主任業務をする中でスタッフと師長の間に挟まれて、管理職としてどのように仕事をしていけばよいのかと悩んでいた時期でした。そんなときにファーストレベルの受講を勧められ、「マネジメントの勉強をすれば、状況を打開するヒントが見つかるかもしれない。ぜひ参加したい!」と感じました。
※認定看護管理者教育課程 :認定看護管理者とは「日本看護協会認定看護管理者認定審査に合格し、管理者として優れた資質を持ち、創造的に組織を発展させることができる能力を有すると認められた者」をいう。日本看護協会では、認定看護管理者に必要な教育課程を、「ファーストレベル」「セカンドレベル」「サードレベル」の3課程と定めている。
──ファーストレベルでは、どのようなことを学んだのでしょうか?
ファーストレベルの研修では、看護管理者の役割や活動、人材育成などについて講義形式で学びました。また、特に印象的だったのは、他病院の看護管理職とのグループ演習です。私のグループは看護部長1名、師長2名、主任2名で構成され、役職や年齢、大学病院や中小病院まで職場の規模もさまざまでした。
中小規模の病院に勤める私は、研修前に「大病院の看護管理職は、大勢の看護師を盤石な体制でまとめているんだろう」とイメージしていました。しかし、グループで情報交換を進めるうち、役職や病院の規模にかかわらず、皆が私と同じような悩みを抱えていると気がついたのです。
例えば、私は新卒から中途採用まで看護師の年齢やスキルが幅広い中で、どのように指導すればよいのか非常に悩んでいました。しかし、看護師1,000人を抱える大学病院の管理職も、私と同じ課題に直面していたのです。「病院の大小は関係なく、みんな同じように悩んで試行錯誤しているんだ」と共有でき、すごく励みになりました。そして、「マネジメントを学ぶことが楽しい、もっと学びたい」と意欲が湧きました。
──グループメンバーとは、具体的にどのような情報交換をされたのでしょうか?
グルーブ内の看護部長や師長のメンバーから、「若手の看護師には1から10まで詳しく教えたほうがよい」「中途採用の看護師の経験は尊重しなければいけない」などの助言をもらいました。それまでは、「見て覚えてね」のスタンスで教えてしまいがちだった私にとって、大きな学びでした。
これらの助言を職場内で実践してみたところ、新卒の看護師はスムーズに業務を習得できるようになり、中途採用の看護師も以前より生き生きと働いてくれるようになりました。
──2025年8月に、セカンドレベルを受講予定と伺っています。受講の動機を教えてください。
師長になって約10年間、患者さんに安全な医療を提供するため、スタッフや病棟を守るために必死で業務に当たってきました。管理業務に少し慣れてきた今、知識をアップデートし、人材育成や病院経営に関してもさらに学びたいと考えるようになり、受講を決めました。
今後、看護師の人材育成に関しては、患者さんの退院を支援するスキルを強化していきたいと考えています。当院は地域に密着しており、診療報酬は包括払い方式ですが 、DPC(診断群分類別包括評価)の病院に比べると、患者さんの治療から退院調整まで、じっくりと関われる特徴があります。
しかし、退院調整の経験が少ない看護師もおり、地域連携室にお任せとなりがちです。これから、看護師主体で退院支援を進められる体制をつくるためには、教育が必須だと感じています。セカンドレベルの講義や演習を通して、ほかの病院がどのように教育に取り組んでいるのかを知り、解決の糸口が見つけられればと期待しています。
──協会のおすすめの活用法はありますか?
最近、私も同僚から聞いて知ったのですが、メディアセンター(図書室)は、会員登録を済ませると、自宅でも論文や文献の検索や閲覧ができるのでおすすめです。メディアセンターは、看護研究をしたりケースレポートを書いたりする上で有益なサービスなので、今後は私も積極的に利用していきたいです。
また、各地区支部が主催する研修もおすすめです。身近な場所で、新人教育や摂食嚥下ケアなど、看護に関連する多様な研修 が受けられるのです。地区支部の研修は、遠くの会場に足を運ばなくても学べるため、特に育児中の方は活用するとよいのではないでしょうか。当院の看護師たちも利用しており、スキルアップに役立てています。
──協会に対して、今後期待することはありますか?
スタッフのメンタルヘルス不調に直面した際に、職場での対処法を専門家に相談できる窓口を設置してもらえると大変助かります。
メンタルケアは現場の師長にとって大きな課題です。しかし、管理職といえども精神医療の専門家ではないため、対応は非常に難しいと感じています。チャットやメールなどの形式でも構いませんので、管理職や看護師がメンタルケアの相談を気軽にできる場所があるといいですね。
──最後に、若手看護職や協会への入会を検討している方に向けてメッセージをお願いします。
協会は、看護の専門的な最新知識を身近な環境で学べる、「スキルアップの宝庫」のような場所です。例えば、看護管理、感染対策、医療安全などの研修を自力で探して参加するのは、時間も手間もかかりますよね。でも、ホームページで検索すれば、必要な研修が簡単に見つけられて、著名な講師の研修にも参加できます。研修やメディアセンターをどんどん活用すれば、看護師としてのスキルアップがぐっとしやすくなるはずです。
そして、研修に参加すればほかの職場で頑張る看護師や多職種との交流ができて、自分の居場所が広がります。まずは、研修に参加したり、メディアセンターに文献を見に行ったりするだけでも構いません。一歩踏み出せば、きっと新たな看護の世界が開けると思います。
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